こんにちは、エレキおじさんです。 全5回でお届けしてきたこの回顧録も、今回で最終回となります。
前回、苦労して手に入れたSG1000のお話をしましたが、実はその後、悲しい別れが待っていました。 第1話の冒頭で書いた「自転車と違ってギターは……」という話に繋がる、30年の空白と再会の物語です。
「父」になるための代償
あんなに苦労して手に入れたSG1000とMUSICMANのアンプ。そして先輩から譲り受けたグレコSE500。 私の青春そのものだった機材たちと別れる日は、唐突にやってきました。
長女が生まれた時です。 狭いアパートでの生活、これから掛かる子供の養育費、そして「父親としての責任」。 今となっては正確な理由は思い出せませんが、私は衝動的に、すべての機材を楽器店へ持ち込みました。
二束三文のような値段で買い取られていく相棒たち。 でも、不思議と涙は出ませんでした。「家族のためだ、これが大人の男だ」と自分に言い聞かせていたのかもしれません。
30年の空白
それから30年。 私は必死に働き、子供を育て上げました。 家の中から音楽は消えましたが、テレビで懐かしい曲が流れると、無意識に左指が動いている自分に気づくことがありました。 「いつかまた……」 その小さな火種だけは、心の奥底で消えずに残っていたのです。
「これだよ、これ!」10年前の再会
子育てもひと段落した10年前、ふと見たギターサイト「J-GUITAR」で、あの日手放したのと同じSG1000を見つけました。 驚いたことに、30年経ってもその価値は落ちていませんでした。
「迎えに行かなくちゃ」
迷わず購入ボタンを押しました。 届いた段ボールを開けた瞬間、レッドサンバーストの輝きと共に、あの頃の匂いが蘇りました。 ネックを握った感触。「これだよ、これ!」 はやる気持ちを抑え、弦を弾きました。
自転車とは違った現実
しかし、現実は残酷でした。 指が、まったく動かないのです。
「自転車は久しぶりでも乗れるのに、ギターは弾けなくなってしまうのか……」
頭の中では高中正義のフレーズが鳴っているのに、指が追いつかないもどかしさ。 愕然としましたが、同時にこうも思いました。「これからまた、始めればいいじゃないか」と。

浦島太郎、デジタルアンプに驚愕する
リハビリを始めるにあたって、私が手に入れたのは昔のような巨大な真空管アンプではありませんでした。 時代は変わっていました。私が選んだのはVOXの「JamVOX」。 パソコンに繋ぐだけでモニターから音が出る、スピーカー一体型のオーディオインターフェースです。
ギターをパソコンに繋ぐ? モニターからアンプの音が出る? 昭和の機材で時が止まっていた私にとって、それは衝撃的な体験でした。
「今の時代は、こんな小さな箱から往年の名機の音が出るのか……!」
まさに浦島太郎状態です。 しかし、このJamVOXとの出会いが、私を新たな「沼」へと引きずり込む入り口でした。
そして「機材沼」の旅は続く
JamVOXでの衝撃をきっかけに、私の興味は「いかにして自宅で良い音を出すか」という深淵なる世界へ向かいました。
PC上のアンプシミュレーター「AmpliTube」のリアルさ。 温かい音を求めて彷徨った「真空管プリアンプ」の沼。 安く手に入れて工夫して使った、往年の名機「Roland GP-100」や「KAWAI製ミキサー」。 そして、進化し続ける「最新のマルチエフェクター」。
指は昔のように動きませんが、機材をあーでもないこーでもないと弄り回し、YouTubeに合わせてギターを弾く時間は、何にも代えがたい至福の時です。
これらのディープな機材遍歴や、私なりの使いこなし術については、また別の記事でじっくり語らせてください。 私の「昭和ロックとギター生活」は、形を変えて、今もまだ続いているのですから。
あなたにも、押し入れの奥に眠らせている「夢」はありませんか? もしあるなら、私と一緒に引っ張り出してみませんか。 指は動かなくても、心はあの頃のままのはずですから。
(完)